民主党蓮舫代表への執拗な批判を目にして

 今日、7月19日配信の東洋経済オンラインの安積 明子氏(「ジャーナリスト」との肩書を付している。)の『二重国籍疑惑を報じると「差別主義者」なのか 批判者を敵視する蓮舫氏の姿勢は変わらず』と題する記事を読んだ。この人が、どんな人か、私は、全く知らないが、以下の部分が気になり、敢えて論評することにした。

 「そもそも野党第一党である民進党の代表に就任することの意味は、政権交代が起こった場合は総理大臣に就任する可能性があるということだ。では総理大臣は二重国籍保有者でいいのか。現在の日本の法制度は、原則として二重国籍を認めていない。

 これを「差別」と主張する人もいるが、国民を代表し国政を担う地位に就くには、厳密なルールが必要であることも事実だ。

 (中略)

 たとえばオーストラリアでは二重国籍者が議員になることは憲法で禁じられている、米国大統領になるには「出生による市民権保有者」でなければならない。こうした例を見ても、公務就任権は天賦の人権とはいえないだろう。

 (中略)

 一方で蓮舫氏は、納得をしているわけではないようだ。国民が蓮舫氏に求めているのは戸籍の開示という行為ではなく、国や国民に対する誠意である。にもかかわらず、7月13日の定例会見で蓮舫氏はそのような国民の声を『差別主義者・排外主義者』と呼んだのだ。オバマ前大統領が出生証明書の公表にあたって、『差別主義者・排外主義者への対応』と発言していれば大問題になっていただろう。」

 この記事には、三つの疑問がある。

 一つ目は、わが国国籍法の誤解があるということ。わが国国籍法は、「国籍唯一の原則」をとっているが、結果的には二重国籍者の存在を承認せざるを得ないという立場をとっている。つまり二重国籍者は違法の存在ではない。この微妙な勘所を無視して、安積氏のように「現在の日本の法制度は、原則として二重国籍を認めていない。」と断定してしまうと、二重国籍者は、違法の存在であるという印象を読者に与えてしまう。おそらく安積氏も、それが目的ではなかろう。やはり言葉は正確に使いたいものだ。
 わが国国籍法が、このように微妙な立場をとっているのは、現在のグローバル化した国際社会において国境を超えた人の往き来が常態化していること、国よって国籍取得原因の相違(大きく分ければ出生地主義と血統主義の二つ)があり、二重国籍を防ぎようがないこと、二重国籍の禁止の大原則を打ち立てれば大混乱をきたし、実効を期し得ないこと、さらにつけ加えれば、国際社会において二重国籍を容認する国が、先進国を中心に多数であることなどが考慮されているのだろう。

注:二重国籍を認めている国
アメリカ合衆国、イギリス、アイルランド、フランス、イタリア、オランダ、デンマーク、フィンランド、スペイン、ポルトガル、スイス、カナダ、ロシア、スロバキア、チェコ、ギリシャ、イスラエル、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、コロンビア、ブラジル、ペルー、パラグアイ、ウルグアイ、トルコ、ナイジェリア、モロッコ、南アフリカ共和国、コートジボワール、台湾、フィリピンなどで。
とりわけヨーロッパでは、1997年、ヨーロッパ国籍条約において、出生や婚姻などで多重国籍となった場合にはこれを容認しなければならないという規定が盛り込まれている。


 このようなことからすれば、むしろ「国籍唯一主義の原則」の建前を現実にあわせ、国籍法14条の国籍選択を迫る条項や、残存国籍を離脱する努力義務を定める同法16条1項の規定の方を改正するべきではなかろうか。

 二つ目は、政治リーダーとしてのあり方という政治的・道義的な問題と、公的地位につく者の法的資格の問題を混同しているということである。わが国は、法的規制はないのであるから、安積氏は、政治的・道義的問題を論じているのであろうが、それならそのことをはっきりさせた上で、ただ法的規制をもうけている他国の事例をあげるだけではなく、その実質的根拠を示さなければならない。

 三つ目は、蓮舫代表が、7月13日の定例会見で『差別主義者・排外主義者』に言及したことをもって、7月18日の説明も「国や国民に対する誠意」がないと評価しているらしいことである。
 どうも安積氏には、一部のネット上での論評、或いは右派マスコミでのこの問題の取り上げ方が『差別主義』的、『排外主義』的であるとは見えないようだ。だが、これらでの取り上げ方に『普通の国民』とは一線を画するものがあったことは明らかである。
 蓮舫代表は、7月18日に記者会見では、『差別主義者・排外主義者』ではなく、『普通の国民』に語りかけたものであり、私は、評価できるものであったと思う。

 民主党には、これを機に、野党の主軸、無党派と野党の結び目として、歩みを進めることを、期待したい。

                              (了)
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR