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砂川事件最高裁判決によって集団的自衛権の行使が認められるとの俗論を排す (1)

はじめに

集団的自衛権行使容認に向けて、自民党・高村副総裁が、自民党内及び与党間の意見調整にむけて活発に動いている。
4月2日、高村氏は、砂川事件最高裁判決(以下「砂川判決」という。)を持ち出し、最高裁は主権国家に固有の権利として自衛権を認めているとし、国連憲章51条も、加盟国は個別的又は集団的自衛の固有の権利を有することを定めている、だからわが国は、個別的であれ、集団的であれ、必要最小限度の自衛権を行使することができると主張した。

さらに3日、NHKは以下のように報じた。

「自民党の高村副総裁は集団的自衛権の行使容認を巡って3日、国会内で行使容認に慎重な発言をしてきた自民党岸田派の名誉会長の古賀誠元自民党幹事長や、自民党の野田税制調査会長と会談しました。この中で高村氏は『必要最小限度の範囲内であれば、個別的であるか、集団的であるかにかかわらず自衛権は認められる。集団的自衛権の行使容認は日本の安全保障に直接関係がある場合に限ることとし、具体的な要件について検討を進めたい』と述べ、理解を求めました。これに対し、古賀氏は限定的な行使容認はやむをえないという考えを示したうえで、『歯止めは必要だ』として、要件の内容を十分詰めるよう求めたほか、野田氏も「本来は憲法を改正するのが筋だが、それが難しい以上、憲法解釈の変更による行使容認で進めるしかない」と述べて、高村氏の考えに理解を示しました。」

砂川判決が憲法9条は主権国家に固有の権利として自衛権を認めていることをあげて集団的自衛権行使容認の論拠としようという意見は安保法制懇の議論のなかでも出ていたことであり、目新しいことではない。しかし、高村氏が、二番煎じにもかかわらず敢えてこれを持ち出したのは、自民党内及び与党間の意見調整のための錦の御旗とし、個別的か集団的かを問題とすることなく「必要最小限度の自衛権の範囲」との枠組みを設定し、従来、集団的自衛権行使の問題とされてきたケースに対処できるようにしようという高等戦術である。集団的自衛権に対する批判が強いので、あえて集団的自衛権という言葉を使わず、「静かに、そっと」集団的自衛権事態に対処できるようにしてしまおうというわけだ。麻生副総理も拍手喝采しているだろう。

砂川判決をどう読むべきか

砂川判決は、田中耕太郎長官が、事前に米国駐日大使と面談をしていた事実も明らかとなっており、米国への配慮と政治追随をした最低、最悪の判決、司法の独立に重大な汚点を残したものであった。

その砂川判決でさえ、安保法制懇の「有識者」なる者たちや高村氏が言うように、主権国家に固有の権利として自衛権を認めた判決として評価されるべきではないのである。

判決理由中には、主文を導くのに必要不可欠な事実認定、法令の解釈・適用を記述した部分と、主文を導くには必ずしも必要ではないことを記述した部分、たとえば話しの筋道として一応触れたに過ぎない部分、はなはだしきは無駄話、脱線部分、言わでもがなの部分などがある。判例としての価値があるのは、主文を導くのに必要不可欠な事実認定、法令の解釈・適用を記述した部分であり、それが判例の射程範囲を画することになる。一方、それ以外の記述は、傍論と言われ、判例とはならない。

そこで砂川判決を読んでみよう。

主文は「原判決を破棄する。本件を東京地方裁判所に差し戻す。」であった。要するに、原審・東京地裁が「アメリカ合衆国軍隊の駐留が、憲法9条2項前段の戦力を保持しない旨の規定に違反し許すべからざるものであるということを前提として、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約3条に基く行政協定に伴う刑事特別法2条が、憲法31条に違反し無効である」とした判決を蹴ったのである。

その結論を導くのに必要不可欠な理由を判示した部分は以下のとおり。

本件安全保障条約は、前述のごとく、主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであって、その内容が違憲なりや否やの法的判断は、その条約を締結した内閣およびこれを承認した国会の高度の政治的ないし自由裁量的判断と表裏をなす点がすくなくない。それ故、右違憲なりや否やの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、従って、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであって、それは第1次的には、右条約の締結権を有する内閣およびこれに対して承認権を有する国会の判断に従うべく、終局的には、主権を有する国民の政治的批判に委ねられるべきものであると解するを相当とする。

果してしからば、かようなアメリカ合衆国軍隊の駐留は、憲法9条、98条2項および前文の趣旨に適合こそすれ、これらの条章に反して違憲無効であることが一見極めて明白であるとは、到底認められない。そしてこのことは、憲法9条2項が、自衛のための戦力の保持をも許さない趣旨のものであると否とにかかわらないのである。

原判決が、アメリカ合衆国軍隊の駐留が憲法9条2項前段に違反し許すべからざるものと判断したのは、裁判所の司法審査権の範囲を逸脱し同条項および憲法前文の解釈を誤ったものであり、従って、これを前提として本件刑事特別法2条を違憲無効としたことも失当

砂川判決の判例としての意義、価値はここまでである。

                                    (続く)
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Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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