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「立憲主義」の深層

「立憲主義」なる概念は、一義的に明確ではない。たとえば、明治憲法下においても次の二様の考え方の対立があった(樋口陽一「憲法 知の復権へ」(平凡社ライブラリー104頁以下)。

一つは美濃部達吉博士の考え方。美濃部博士は、明治憲法のもとにおいて、天皇は国家の一機関であり、その権能は、憲法の定める条項により制約を受ける、とりわけ国民の代表者で構成する議会の多数派が内閣を組織し、内閣の決定にもとづいて行使されるべきであると説いた。
もう一つは穂積八束博士の考え方。穂積博士は、明治憲法のもとにおいて、天皇は統治の中心にあり、憲法の条項に従うほかは何らの制約も受けないと説いた。

表面的には、どちらも、天皇といえども憲法に従う義務があるという点では共通性がある。しかし、その意味するところは全く異なる。美濃部博士は、近代ヨーロッパの憲法原理に近い考え方で、天皇を、議会(国民の意思)による他律的拘束のもとに置こうとしているのに対し、穂積博士は、天皇自らが制定した憲法に自己抑制として従うというに過ぎず、議会による他律的拘束は問題外である。

近代ヨーロッパの憲法原理は、フランス革命下の憲法制定国民議会において1789年8月26日採択されたフランス人権宣言(人及び市民の権利宣言)に定める天賦人権、国民主権及び第16条「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法をもたない。」との規定に示されているところである。
そこで近代「立憲主義」とは、国家権力は、このような近代ヨーロッパの憲法原理を体現した憲法によって厳格に拘束され、立法、行政、司法の三権に分立して、その行使がなされるということを意味することになる。

わが国においては、日本国憲法の制定により状況は劇的に転換を遂げた。日本国憲法は、近代ヨーロッパの憲法原理を具現し、さらには生存権条項など社会権規定や平和主義条項により一層発展させ、美濃部博士の所説をはるかに追い抜いてしまった。

日本国憲法の下では、国家権力は、基本的人権、平和主義などの憲法諸条項によって厳格に縛られ、立法、行政、司法の三権に分立して、その行使にあたることとなる。

これがわが国における現代の「立憲主義」の意味である。

安倍首相は、本年2月3日、衆議院予算委員会において、立憲主義について、「憲法についてですね、考え方のひとつとして、いわば国家権力を縛るものだという考え方はありますが、しかし、それは嘗て王権が絶対権力を持っていた 時代の主流的な考え方であって、今まさに憲法というのはですね、日本という国のかたち、そして、理想と未来を語るものではないかと、ま、このように思います。」とその所見を述べた。こういう考え方が現代に通用する「立憲主義」でないことは明白であろうし、これでは集団的自衛権行使を容認する解釈改憲に前のめりになるのも当然である。

さてまだその先がある。現代の「立憲主義」によれば、憲法の名宛人は国家権力であり、その担い手であり、個々の国民は名宛人ではない。従って、国民は、日常的生活や活動の場面で、憲法を守る義務を負うものではない。しかし、国民主権のもとでは、国家権力の最終的担い手は国民である。その国家権力の最終担い手としての国民には憲法尊重擁護の義務があると考えるべきであろう。

憲法12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と定め、97条「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」と定めている。これらは、国民主権の担い手たる国民に基本的人権を保持する義務を負わせたものである。

また憲法96条1項は、憲法改正に関し、国民投票を実施することを定めている。これは、国民主権の担い手である国民に対し、国民投票を通じて憲法を守る義務を履行すべきことを求めているのである。

さらに付け加えれば、憲法を勝手に変えようとする政府を、批判し、退陣に追い込むために政治行動を起すことも国民主権の担い手たる国民の憲法擁護義務の一つである。
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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