法解釈についていけない人たち

政府は、第一に、憲法9条のもとでも自衛権は認められる、第二に、自衛隊は自衛権を行使するための必要最小限度の実力組織であり、憲法9条2項の戦力にあたらない、第三に、憲法9条のもとで自衛権の行使は、①わが国に対する急迫不正の侵害があること、②この場合にこれを排除するために他に適当な手段がないこと、③必要最小限度の実力行使にとどまるべきことの三要件のもとに認められる、第四に、憲法9条のもとでは集団的自衛権は認められない、以上の四点を、政府見解として提示し、国会等の場で繰り返し確認してきた。

これらの政府見解のうち、第三の自衛権行使三要件は、周辺事態法、PKO協力法、テロ特措法、イラク特措法等、過去幾たびも、自衛隊の活動の限界を画する実効性ある規範として機能してきたことは記憶に新しいところであり、また三要件中①の要件を充たさないことが第四の集団的自衛権を認めない政府見解を導き出す根拠にもなっているのである。

自衛権行使三要件の意味するところは極めて重要であるから、繰り返しになるが確認をしておきたい。

①は、わが国に対する攻撃が急迫もしくは現在していなければならないこと明らかにしている。
②は、考えられる全ての手段を尽くしたが、反撃する以外に方法がないという場合にはじめて認められることを示している。
③は、反撃の程度が必要最小限度という意味であり、過剰反撃は認められないこと、端的にいえば侵入部隊を領土、領海、領空から撃退することがその限度であるということを示している。

これらは政府部内において、憲法・諸法令に最も通暁した専門家集団からなる内閣法制局(内閣法制局設置法第3条により、「閣議に附される法律案、政令案及び条約案を審査し、これに意見を附し、及び所要の修正を加えて、内閣に上申すること」、「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること」などが所掌事務として定められている。これらの規定から内閣法制局は政府の法律顧問に相当する役割を果たすものといっていい。)の厳密な法解釈をもとに確定されたものである。

安倍首相や自民党高村副総裁は、この厳密な法解釈についていけない人たちであることは、彼らが根っからの「政治家」であることからまだ諦めもつく。しかし、民主党野田政権の防衛大臣を務めた「学者」出身の森本敏氏(現拓殖大学特任教授)までもが、以下のような見解を披露しているのは、大目に見るわけにはいかない。

以下は2013年8月29日朝日新聞朝刊に載った森本氏へのインタビュー記事である。

問い 行使を認めない現在の憲法解釈はおかしいと。

森本 集団的自衛権を『国際法で認められているが、必要最小限度の自衛力の範囲を超えるから使えない』という解釈は主権国家として無理がある。自衛隊を違憲だとする世論に対して『必要最小限度の実力組織』と合憲性を強調。集団的自衛権を行使しないという論法で周辺国の懸念を払拭(ふっしょく)する政治的な判断でしょう。条文解釈や法理解釈ではない。政治的な解釈だから、変えられないという意見を私はとらない。

森本氏は、自衛権行使三要件もご存知ではないし、集団的自衛権が認められないという論拠についてもおぼつかないようである。しかも、「周辺国の懸念を払拭するための政治的判断であって、条文解釈や法理解釈ではない」など手前勝手な忖度までしている。憲法?そんなもの関係ない、必要性が全てを決めるのだとうそぶくアウトローの論理。このような人物を防衛大臣に据えた民主党政権が、国民にそっぽを向かれたのもむべなるかな、というべきか。
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No title

森本氏が大臣をやってる時代に、下準備が始まってるんですよ

http://www.peace-forum.com/p-da/140730.htm
>現在、日米両政府が準備を進めている、2度目のガイドライン見直しは、主として中国の海洋進出問題に対応するために、民主党の野田政権が検討し、
>2012年末の政権交代で安倍政権が引き継いだものである。2012年8月には、「日米同盟―アジア安定の礎石」(第3次アーミテージ・ナイレポート)が発表された。
>そこに提言として書かれた日本への要求は、5月15日の安保法制懇報告書および安倍首相の会見で示された内容と符合している。
プロフィール

深草 徹

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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