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安保法制懇報告書を読む (5)

1 報告書は、次のように述べる。

① 日本国憲法前文、13条において、平和的生存権および生命、自由及び幸福追求権は基本的人権の根幹であり、また国民主権原理は根本原則とされている。それは国家、国民の安全の確保ができてはじめて成り立つものである。従って、自衛力の保持と行使は、憲法に内在する論理の帰結である。

② 日本国憲法前文、98条は国際協調主義を掲げている。その精神から国際的活動に積極的に取り組まなければならない。

③ 平和主義は日本国憲法の根本原則であり、9条に具体化されている。同じく国際協調主義も前文、98条に定める日本国憲法の根本原則である。「国家安全保障戦略」(2014年12月17日閣議決定)の「国際協調主義に基づく積極的平和主義」は、「我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与する」ことを目的とするものであり、ここに平和主義と国際協調主義が体現されている。

 報告書は、このように主張することにより、二本柱の政府見解により明示された9条解釈論に水をさそうとしたのである。果たしてその企図は達成されたであろうか。

2 残念ながら、三球三振に終わり、二本柱をかすりもしなかった。その理由は以下に示すとおりである。

 第一は①について。わが憲法において、平和的生存権および生命、自由及び幸福追求権、国民主権は、国政の運営において最大限尊重されなければならず、政府は、これらを侵害してはならない。このことはいうまでもないことである。だからわが国の平和と安全を守らなければならないことも当然であり、誰しも異論はないだろう。
 こうしたことで意見の対立が生じることはまず考えられない。問題はその先にある。即ち、それをどのように実現するかである。

 報告書は、軍事力と軍事同盟をバックにした力を重要視する。典型的なパワーポリティックスの立場である。その立場から、現状は危ういと見ているのである。しかし、軍事力と軍事同盟の強化は、武力衝突を誘発し、小さな武力衝突を大きな戦争に燃え広がらせたことを、私たちは歴史的に体験している。

 軍国主義国家であった我が国は、その痛切な体験を通して、戦後、軍事力と軍事同盟に頼らないでわが国の平和と安全を保持することを選択し、確認した。日本国憲法前文と9条はそのことを明確に定めている。その前文と9条の趣旨を、複雑な国際社会の力学に翻弄され、民意が揺れ動く中で、最大公約数で表現したのがかの政府見解二本柱である。

 他国に攻め入ることは勿論、海外で武力を行使しないこと、一切の紛争を平和的手段で解決する立場に徹すること及びわが国の自衛隊は専守防衛の手段であることを、堅持し、世界に鮮明にアピールし、世界平和の先頭に立って努力することこそがわが国の平和と安全を守るより確かな道である。

 第二は②について。報告書は、国際協調主義の語義を転換させている。報告書のいう国際協調主義とは、他の一国もしくは数カ国と協調して武力行使をすること、あるいは国連もしくは他の国際機関の武力行使を含む強制措置に参加することを意味している。しかし、それは国際紛争を武力で解決する立場であり、本来の国際協調主義ではない。

 本来の国際協調主義は、経済的・文化的・人的交流による信頼関係の醸成、及び後発国あるいは発展途上国における貧困・差別・抑圧の緩和のための国際援助を通じて、紛争を未然に防止し、万一紛争が発生しても平和的な交渉を通じて解決する努力をし、最後の最後まで武力でことをかまえないことを本旨とする考え方である。日本国憲法前文、9条がこの考え方を基礎としていることは明らかである。

 第三に③について。平和主義、国際協調主義については上述したところで十分であろう。
報告書は、「積極的平和主義」なる安倍政権のスローガンにいたく感激をしているようであるが、そもそも積極的平和主義とは、ノルウェーの平和学者ヨハン・ガルトゥングによる、「消極的平和」は「戦争のない状態」、「積極的平和」は戦争がないだけではなく「貧困、差別など社会的構造から発生する暴力がない状態」との定義に基づき、「貧困、差別など社会的構造から発生する暴力がない状態」を実現しようとする考え方(ヨハン・ガルトゥング「構造的暴力と平和」中央大学現代政治学双書)であって、軍事力と軍事同盟を強化し、それをバックにした力で国益を追求する安倍流「積極的平和主義」とは無縁のものである。

                                          (続く)
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Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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