核燃料サイクルからの撤退を! (6)

核燃料サイクルのバックエンド、使用済燃料の再処理について論じてきたが、ここで一応そのまとめをしておくこととする。これだけでも核燃料サイクルが砂上の楼閣であることは明らかであるが、核燃料サイクルの推進力とされる高速増殖炉とその陰の存在ともいうべきプルサーマルについても、一通り述べることにより、核燃料サイクルを完膚なきまでに粉砕しなければ気が済まなくなってきた。手抜きせず、もう少し続けていくこととする。

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使用済燃料再処理まとめ
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ここまで述べてきたところから明らかであろうが、使用済燃料の再処理は、膨大なコストを要し、再処理から高レベル放射性廃棄物の処分に至るまで各プロセスにおいて大きな危険を抱えている上に、再処理施設や附帯設備の建設、整備も、現実の要請にはとても追いつかず泥縄状態にある。

しかも再処理工程ではき出されるガラス固化体を30年~50年間貯蔵するという貯蔵施設の貯蔵能力もごくわずかであり、最終処分地に至っては候補地選定作業の第一段階の入口ではやくも頓挫を来たしてしまっている。

まさに八方ふさがりである。これらに加えて、再処理路線を推し進めることにより、結果として、大量のプルトニウムを備蓄してしまうことになり、核拡散をめぐる国際的軋轢をかかえ込まなければならないことになる。

アメリカでは、1980年代に、経済性と核不拡散を理由に、建設途中のバーンウェル再処理工場の建設を放棄し、ワンススルー路線をとることをより明確にした。ドイツも、バッカースドルフ再処理工場を建設中に、安全対策のために設計変更を余儀なくされ、建設費が当初見積に比べて3倍となってしまったため、1989年、その建設を放棄し、再処理路線をやめた(さらに、その後、原子力発電そのものをやめる方針を明確にした。)。イギリスは、再処理路線を採用しているが、再処理のコストが高いことが一因で、経営危機に陥っている原子力発電事業者もあるという。

こうした客観的困難及び国際的趨勢にもかかわらず、大綱において、安全性、技術的成立性、経済性、エネルギー安定供給、環境適合性、核不拡散性、海外の動向、政策変更に伴う課題、社会的受容性、選択権の確保などを検討した結果として、①過去の技術的知見の蓄積、②エネルギー安定供給、③環境適合性などにおいて再処理路線が優れているとし、再処理路線を堅持することを確認し、その後、逐次のエネルギー基本計画においても、使用済燃料再処理の推進を謳ってきた。

2012年9月策定された「革新的エネルギー・環境戦略」において「直接処分(注:ワンススルー)の研究に着手すると、ようやくにして重い腰を上げたと思ったら、今回のエネルギー基本計画(原案)では、先祖がえりを果たそうとしている。今、これを許せば、政治家、経産官僚、日本原燃はじめ核燃料サイクル関連企業・電力事業者の政官財トライアングルが息を吹き返すことになってしまうのだ。

ついで高速増殖炉に話を進めることとするが、今日は、高速増殖炉とはどんなものかを説明するにとどめることとする。

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高速増殖炉とはどのようなものか
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高速増殖炉とは、核分裂により放出された中性子を減速せず、高速中性子のまま用いるので「高速炉」、また運転中に燃えた核分裂性のウランやプルトニウムよりも多くの核分裂性のプルトニウムを生産することを目的として設計されているので「増殖炉」、両者をつないでそのように呼称されるのである。

まず高速増殖炉で使用される核燃料は、プルトニウムが15%~20%程度、残りは、殆どが核分裂をしないウラン238からなるMOXである。だから、このMOXは、プルトニウムそのものが核燃料となるのだと考えてよい。

核分裂性のプルトニウムは、ウラン235よりも中性子を吸収しやすく、核分裂をおこしやすいという特性がある。一方、ウラン238は高速中性子をよく吸収するという特性がある。こうした特性を利用し、高速中性子を効率的に吸収して核分裂を引き起こすように炉心中心部に密集してMOX燃料を配置し、炉心中心部で進行する核分裂により放出される中性子が炉内から漏れ出すのを防ぎ、むしろ効率よくウラン238に吸収されるように炉心外周部にウラン238からなるブランケット(blanketは毛布。厚手の毛布のように覆いをするものという意味であろうか。)で囲いをする。

こうして、理屈の上では、効率よくウラン238はプルトニウムに転換されることになる。まるで「打ち出の小槌」のようにプルトニウムをつくりだし、限られた量のウラン235に代替できるプルトニウムを増殖することができることになる。

軽水炉では、普通の水が、減速材でもあり、冷却材でもあった。高速増殖炉では、減速材は使われない。冷却材には、ナトリウムが使用される。ナトリウムは、常温では銀白色の柔らかい固体で、常圧のもとでは、融点が98℃、沸点は882℃である。そこで、融点をこえて熱せられ、液体となったナトリウムが冷却材として用いられるのである。

液体ナトリウムは、以下述べる理由から、高速増殖炉の冷却材として、願ったりかなったりの優れものである。第1に、液体ナトリウムは、常圧であっても沸点が882℃と非常に高いので、150℃~700℃の広い範囲で、安定した冷却材として使用できる。第2に、ナトリウムは、いくつかの原子が結合してできる分子ではなく、単原子であるから、原子炉容器内での放射線照射によっても変性しない。第3に、ナトリウムは、熱しやすく、冷めやすいので熱伝導性に優れている。第4に、これも重要なことだが、ナトリウムの原子核は、陽子が11個、中性子が12個からなる質量23の重いものであるから、これに中性子があたっても、あたった中性子は減速しない(コンクリートにぶつけたボールが強く跳ね返るのと同じと考えてよい。)。第5に、ナトリウムの比重は、0.98で、水よりも僅かに小さいので、液体状態では、ポンプで循環させ易いということ、さらに言えば値段が、割と安いということも挙げられる。

高速増殖炉の冷却材は一次冷却材と二次冷却材とに区分される。原子炉容器内の炉心をひたす液体ナトリウムが一次冷却材である。その一次冷却材が循環し、原子炉容器から出て、格納容器内の熱交換器に至り、格納容器外から循環してくる液体ナトリウムである二次冷却材に熱を引き渡す。原子炉容器内の一次冷却材は、核分裂の熱を奪い、500℃を超える温度になっているが、二次冷却材に熱を引き渡すことにより自らは冷却される。一次冷却材から熱を引き渡された二次冷却材も、500℃程度になる。そして二次冷却材は、格納容器外の熱交換器(蒸気発生器)において、外から循環してきた水を熱し、蒸気を発生させ、自らは冷却される。ここで発生した蒸気が、タービンを回して発電をする(一次冷却材、二次冷却材、水、蒸気の循環の仕方は、わが国が採用したループ型高速増殖炉に即して説明したが、他の型式のものも基本原理はかわらない。)。
(続く)

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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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