国連加盟と日本国憲法第9条

安保法制懇報告書は「我が国が1956年9月に国連に加盟した際も、国際連合憲章に規定される国連の集団的安全保障措置や、加盟国に個別的又は集団的自衛の固有の権利を認める規定(第51条)について何ら留保は付さなかった」と述べている。

我が国が国連に加盟申請をしたのが1952年6月、最終的に加盟承認されたのは1956年12月である。 
かりそめにも「高名な」有識者らが名前を連ねた文書である。正確を期すべきであることは当然であるが、人間誰しも間違いはあることだから小さなミスは大目に見ておこう。

しかし、嘘、ごまかしは絶対に許すわけにはいかない。

我が国が国連加盟申請をした当時、外務省条約局長をつとめその事務を取り仕切った故西村熊雄氏は、後に、内閣に設置された憲法調査会において、参考人として以下のように陳述している(1960年8月10日/憲法調査会第三委員会第24回議事録)。
 
国際連合事務総長あて加盟申請文の最後に日本政府の声明として、日本は国連に加盟したあとは国際連合憲章から生ずる義務を忠実に果たす決意があることを宣言いたし、そのあとに、ただし日本政府はこの機会に戦争を放棄し、陸海空軍三軍を永久に所持しないということを明らかにしている憲法九条に対し注意を喚起するという一項をつけ加えておいたわけです。当時はまだ占領管理のもとにありましたので―占領管理がはずされましたのは翌年の昭和25年(ママ)4月でございます。私どもがこの案文を書きましたのはその前でございます―(GHQの)外交部の友人から、日本政府として直接憲法九条に注意を喚起するまでいう必要はないではないか、間接的にそれをいった方がいいのではないかというサゼッションがございましたので、確定した文書では間接にいうことになりました。

(ここで故西村氏は次の加盟申請原文を示した)

   Declaratoin             Tokyo ,June 16,1952

Kazuo Okazaki, Minister for Foreign Affairs, having been duty authorized by the Japanese Government, states that the Government of Japan here accepts the obligations contained in the Charter of the United Nations, and undertakes to honour them, by all means at its disposal, from the day when Japan becomes a Member of the United Nations.
(signed)
Minister for Foreign Affairs of Japan

(故西村氏は、上記のby all means at its disposalについて説明を続けた)

そこでは第九条を直接言わないで、日本政府はその有するあらゆる手段によって国際連合憲章から生まれる義務を遵守するが、日本のディスポーザルにない手段(注:日本が自ら行使できない手段という趣旨)を必要とするような国際連合憲章の義務は負担しないことをはっきりいたしたのであります。

以上の故西村氏の陳述で指摘されているのは、直接的には国際連合憲章上の義務についての憲法九条に基づく留保であるが、義務について留保しつつ権利について留保していないという解釈は成り立ち得ない。

さて安倍さん、安保法制懇報告書の述べるところと、誠実な外務官僚・故西村氏の陳述と、どちらを信じるかはあなたの自由だというわけにはいかないだろう。
                                    (了)

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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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