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大飯原発差止判決を読む

 5月21日、福井地方裁判所は、平成24年(ワ)第394号・平成25年(ワ)第63号 大飯原発3、4号機運転差止請求事件について、大飯原発3、4号機の運転差止を命ずる画期的ともいうべき判決をした(以下、大飯原発3、4号機を「本件原発」、この判決を単に「本判決」という。)。

1 本判決が設定した差止め基準

 本判決は、最初に、「ひとたび深刻な事故が起これば多くの人の生命、身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼす事業に関わる組織には、その被害の大きさ、程度に応じた安全性と高度の信頼性が求められて然るべきである。このことは、当然の社会的要請であるとともに、生存を基礎とする人格権が公法、私法を問わず、全ての法分野において、最高の価値を持つとされる以上、本件訴訟においてもよって立つべき解釈上の指針である。」と、自らよって立つ解釈指針を明示した。

 その上で、未曾有の大災害となった福島第一原発事故の被害を、「15万人もの住民が避難生活を余儀なくされ、この避難の過程で少なくとも入院患者等60名がその命を失っている。家族の離散という状況や劣悪な避難生活の中でこの人数を遥かに超える人が命を縮めたことは想像に難くない。」と、簡潔な言葉でではあるが、一点のくもりもない目ですくいとっている。
 私も、現役の頃には、公害裁判に取り組んだことがあるが、公害裁判は被害に始まり、被害に終わると言われる。どのようにしたら被害を裁判所にわかってもらうことができるのかを考え、主張・立証に工夫をし、なんとかやり遂げて裁判所にしっかりと被害を受け止めてもらえたとき、裁判の山を越したことになる。
 同時に、裁判が思うように進行せず、停滞して、つらい時、自己を奮い立たせてくれるものも被害の実相そのものだった。

 現代の最悪の公害である原発事故災害をテーマとした本件訴訟において、それは同じであり、原発事故災害で発生する被害をどう捉えることができるかということが、アルファでありオメガであった筈だ。
 本判決は、原発事故災害の被害を人間の心でしっかり受け止めた。

 その結果、差止基準に関する本判決の重要な法理が導かれた。本判決は以下のように整理する。

 原発に求められるべき安全性、信頼性は極めて高度なものでなければならない、万一の場合にも放射性物質の危険から国民を守るべく万全の措置がとられなければならない。だから、放射性物質を放出する事故を招く具体的危険性が万が一でもあれば、原発の運転の差止めが認められるのは当然である。
 そこでこのような具体的危険性が万が一でもあるかどうかが判断の対象とされるべきであり、福島原発事故の後においては、この判断を避けることは裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しい。

 従来も、たとえば、航空機の離発着に伴う騒音、新幹線の騒音・振動、道路供用による大気汚染物質、騒音、振動の差止請求訴訟などにおいて、人格権は憲法上の権利(13条、25条)であり、中でも生命を守り生活を維持するという人格権の根幹部分に対する具体的侵害に対しては、受忍限度を問うことなく差止めが認められると理解されていた。しかし、生命、健康を侵害もしくはその侵害の蓋然性(相当程度の確からしさ)が認められないと、差止請求は認容されなかった。つまり従来の公害裁判では、生命・健康の侵害の有無もしくは侵害の蓋然性が判断対象だったのである。
本判決は、福島第一原発事故後の原発裁判では、具体的危険性が万が一にもあるかどうかが判断対象だと、差止め基準を思い切って下げたことになる。

2 差止め基準を下げれば司法の役割が強化される

 これまで原発裁判では、専門技術的な判断を要するので、第一次的には専門化、専門機関による安全審査、判定が重視、尊重される傾向があった。しかし、本判決は、具体的危険性が万が一にでも発生するおそれがあるかどうかの判断は、高度の専門技術的な知識、知見を要するものではないと、言い切る。確かにそうだ。万が一にでも起こりえるかどうかは、原発の素人でも判断できる。

 このことは、原発の素人からなる司法機関が、原発裁判で、自信をもって判断を下せることになったことを意味している。

 実際、本判決でも難しい判断を迫られていない。第一に、本件原発を襲うことがあり得る地震を検討する。被告も手の施しようがないことを認める1260ガルを超える地震も起こり得るではないか。基準地振動700ガルを超える1260ガルまでの地震も起こり得る。また被告が安全という700ガル未満の地震の場合でも万一の事故は起こり得る。冷却不全に陥る可能性を認定できる。福島第一原発事故で問題になった4号機の使用済燃料プールの冷却不全の危機、そのようなことは本件原発でも起こりえる。極めてシンプルな認定だ。かくして万一の具体的危険性は幾重にも認められた。

 各地の原発差止め裁判へも、本判決は、大いなる有力な指針を提供したことになる。原発裁判を通じて「絶望の裁判所」を脱却し、司法ルネサンスの時代が到来しそうだ。

3 低次元な原子力学会の批判

 5月27日、原子力学会が大飯判決批判の見解をプレスリリースした。

 批判の第一点は、事故原因が解明されていないとの指摘は事実誤認である、当学会が本年3月、最終報告書を取り纏め、直接の原因のみならず、根本原因まで明らかにしたと。たいした自信だが、原発推進のための「原因解明」でしかなく、国民は納得しない。  

 原子力学会の判決批判の第二点は、ゼロリスクを求める考え方は科学技術に対する裁判所の判断としては不適切、いかなる科学・技術も人間の環境に対してリスクをもたらすが、科学技術によってリスクを十分に低減させた上で、その恩恵とのバランスで社会はそのリスクを受容するべきだとのご託宣だ。しかし、本判決は従来、司法判断の壁となっていた「蓋然性」説を「万が一説」に下げ、司法判断の門戸を広げはしたが、ゼロリスクを求めたのではない。それに原子力学会がよって立つ考え方は、公害対策と経済発展との調和を求める条項(経済との調和条項)が置かれていた公害対策基本法が、公害問題噴出の中で行われた1970年のいわゆる公害国会において、この条項を削除することによりとっくに克服されたものである。リスクと恩恵との調和を説く原子力学会は、40年前の死者の亡霊のようだ。

 原子力学会の批判の第三点は、原子力発電所のみ工学的安全対策を認めないという考え方は公平性を旨とする裁判所の判断としては不適切だというもので、これはたとえていえば高額所得者からは税を多くとるという累進課税制度を当の高額所得者が不公平だと非難するようなもので、すじのとおらない被害者意識を露骨に示したものと言えよう。本判決が、原発事故の重大性を認め、原発に求められる安全性、信頼性は極めて高度なものでなければならないと指摘したのは、福島第一原発事故の被害を放置して安易に原発再稼動を認め、原発を推進しようとする原発利権共同体には厳しい判断かもしれないが、国民的視野で見た場合、公平そのものだ。

 本判決文にこんな文章がある。「危険性を一定程度容認しないと社会の発展が妨げられるのではないかといった葛藤が生じることはない。原子力発電技術の危険性の本質及びそのもたらす被害の大きさは、福島原発事故を通じて十分明らかになったといえる。」。これこそ多くの国民の心をズバリ表現したもの、大きな支持を得るだろう。

 最後は、被告が原発停止⇒円安で高止まりした石油を輸入⇒貿易赤字で国富の流出と恫喝したが、「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富」であり「これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失」だと微動もしない。

                                     (了)

核燃料サイクルからの撤退を! (最終回)

私が社会人としてスタート切ったのは1969年7月1日。この年の夏、勤務先の同僚たちと福井県小浜市の浜に海水浴に出かけた。太平洋岸の工業地帯近傍の浜しか知らなかった私には、あの時の浜は美しく、脳裏に焼き付いている。数年後、再訪したときには跡形もなくコンクリートに打ち固められていた。恐るべき勢いで建設されて行った原子力発電所、そろそろお引き取り願う時期が来た。

連載してきた「核燃料サイクルからの撤退を!」も終わりに近づいた。今日は、全体のまとめをすることとする。

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まとめ
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核燃料サイクルは、①天然ウランの確保、転換、ウラン濃縮、再転換、核燃料の加工からなる原子炉に装荷する核燃料を供給する活動と、②使用済燃料再処理、MOX燃料の加工、使用済燃料の中間貯蔵、放射性廃棄物の処理・処分からなる使用済燃料から不要物を廃棄物として分離・処分する一方、有用資源を回収し、再び燃料として利用する活動である。
上記①の活動はフロントエンド、②の活動はバックエンドと概括される。わが国では、核燃料サイクルを、バックエンドに限定して論じられることが多いようである。

本稿では、バックエンドのうち、使用済燃料の再処理、高速増殖炉及びプルサーマルについて論じてきた。これらは相互に密接な関連性を有しており、一つが破綻をすれば、全てが破綻をするという結果をもたらすことになるのである。しかし、以上で明らかになったことは、いずれもが破綻をしてしまったということである。従って、もはやこれまでどおりにこれらを推し進めることは不可能と結論せざるを得ない。

とりわけ世界のウラン確認埋蔵量は有限(資源エネルギー庁「原子力2010」によると、2007年1月現在で、547万トン、可採年数100年とされる。)である隘路を打開し、エネルギーの安定供給のために、天然ウラン中99.3%もの割合を占めるウラン238を100%使い切るとの「野望」が、高速増殖炉の破綻により、露と消えたことは、決定的である。

今後、わが国は、既に発生してしまった使用済燃料、プルトニウムの廃棄に向けた研究、施設の確保に、早急に、動き出さなければならない。その際、2012年9月11日、日本学術会議が原子力委員会宛てに提出した「高レベル放射性廃棄物について(回答)」において示唆されている、使用済燃料を含む高レベル放射性廃棄物の総量抑制・管理と各電力会社の電力供給圏内で暫定保管施設を確保し、暫定保管しつつ数十年から数百年をかけて抜本的処分策を研究するとの提案も参考とすべきである。

福島原発事故後、ドイツ、イタリア、スイスは原子力発電からの撤退を明確にした。スエーデンは、既にTMI事故のあと原子力発電からの撤退を表明しつつも、その実行が遷延していたが、2011年4月12日、企業・エネルギー大臣が、議会で、「我々は、原子力の利用を延長するようなことはしていない。我々は、原子力への依存を削減すると言っており、これこそまさに我々がやっていることだ。」と述べた。フィンランド政府は、進行中のオルキルオト原子力発電所3号機のあとは新たな原子炉の建設を承認しないと宣言した。アメリカでは、2011年4月、大手電力会社NRGエナジーが、原子炉の新規建設を経済的に正当化できないと判断をして新規プロジェクトから撤退をすることを発表した。中国においても、インドにおいても、原子力発電について見直し或いは厳しい今後の見通しが語られている。

フランスはどうか。フランスは、電力の75%が、原子力発電に依存している原子力発電大国である。そのフランスにおいても、日曜紙「ジュルナル・デュ・ディマンシュ」が2011年6月に行った世論調査の結果によると、国民の77%が脱原子力発電を支持しているとのことであり、2012年5月の大統領選挙では、「2025年までに原発依存度を50に減らす」と「減原発」を表明し、フランス最古のフッセンハイム原発の「速やかな閉鎖」を公約に掲げた社会党・欧州エコロジー緑の党の推すフランソワ・オランドが当選した。国民議会(下院)も同年6月の選挙で、定数577のうち社会党は314議席を獲得し、過半数を上回り、さらに社会党とパートナーを組む緑の党ははじめて17議席の議席を確保した。フランスの原子力政策も一転する可能性を秘めている。

原子力発電そのものは本稿の対象外であるが、福島原発事故を起こしてしまったわが国は、事故そのものからも上述の世界の趨勢からも、原子力発電自体をやめる決断を迫られている。核燃料サイクルの破たんは、こうした決断を促す要因である。

最後にひとこと。2004年に、「19兆円の請求書-止まらない核燃料サイクル」なる怪文書が、何人かの国会議員や原子力委員会関係者などに配布され、ネット上を駆けめぐった。この怪文書、一部に、経産省の改革派官僚の手になるものだと取り沙汰されているが、なかなかいいことが書かれている。核燃料サイクルを「やめられない 止まらない」のは「国と電力業界の原子力利権を巡る政界、官界、業界、自治体のたかりの構図→既得権への固執」であると。

しかし、論ずるだけでは足りない。今こそ、勇気をもって一歩を踏み出さなければならない。まだ遅過ぎるわけではない。


(参考文献)

・原子力委員会「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(第1回~第8回)
       「原子力政策大綱」
・経産省・資源エネルギー庁「エネルギー基本計画 2010年」
・同庁・総合資源エネルギー調査会基本政策分科会・「エネルギー基本計画に対する意見」(2013年12月)
・エネルギー環境会議「革新的エネルギー・環境戦略」(2012年9月)
・日本原燃株式会社「六ヶ所再処理工場の現状と今後の見通しについて」(2011年2月)
・原子力委員会「当面の核燃料サイクルの具体的な実施について」(1997年1月)
・1997年2月4日閣議了解「当面の核燃料サイクルの推進について」
・2008年3月14日閣議決定「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」
・2003年1月27日名古屋高裁金沢支部判決(判例時報1818号)
・石川迪夫「原子炉の暴走第2版」(日刊工業新聞社)
・吉岡斉「新版原子力の社会史 その日本的展開」(朝日新聞社)
・大島堅一「再生可能エネルギーの政治経済学」(東洋経済新報社)
・高木仁三郎「プルトニウムの恐怖」(岩波新書)
・七沢潔「原発事故を問うーチェルノブイリから、もんじゅへー」(岩波新書)
・広瀬隆・藤田裕幸「原子力発電で本当に私たちが知りたい120の基礎知識」(東京書籍)
・小出裕章「隠される原子力 核の真実 原子力の専門家が原発に反対するわけ」(創史社)
・小林圭二・西尾漠「プルトニウム発電の恐怖」(創史社)
・マイケル・シュナイダー「フクシマ・クライシス 日本は本物のパラダイム・シフトの最先端に立てるのか」(「世界」2011年9月号)
・別冊宝島編集部編「世界で広がる脱原発 フクシマは世界にどう影響を与えたか」(宝島社)
・日本弁護士連合会「原子力発電と核燃料サイクルからの撤退を求める意見書」(2011年7月) 
・山口聡「核燃料サイクルをめぐる議論」(国立国会図書館調査及び立法考査局「調査と情報」第473号)
・山口聡「高レベル放射性廃棄物最終処分施設の立地選定をめぐる問題」(国立国会図書館調査及び立法考査局レファランス2010・2)
・片原栄一「日本のプルトニウム政策と核不拡散問題」(「日本の外交・安全保障オプション」日本国際交流センター刊 1998年6月より抜粋」
・羽倉尚人・吉田正「軽水炉における使用済みMOX燃料からのアクチニド崩壊熱の核データ由来の誤差評価」(日本原子力学界平和論文誌Vol.9(2010))
・エドゥイン・S・ライマン「日本の原子力発電所で重大事故が起きる可能性にMOX燃料の使用が与える影響」(核情報ホームページより) 
・筆者不詳「19兆円の請求書―止まらない核燃料サイクル」(2004年)
・核不拡散研究会「我が国の原子力発電・核燃料サイクル政策への提言~「一国主義」を脱却し、責任あるグローバル・プレイヤーへ~」(最終報告書2013年2月)
・舩橋晴俊「高レベル放射性廃棄物という難問への応答 科学の自立性と公平性の確保」(「世界」2013年2月号)

核燃料サイクルからの撤退を! (13)

1月6日付「朝日」紙は、「原発政策 政治の無責任は許されぬ」と題する一本社説を載せた。「福島第一原発の事故に苦しむ日本が、脱原発に向かうのか、それとも元の道に戻るのか。今年はその分岐点になる」との書き出しで始まる、凛として良い文章である。

現在、原子力規制委員会では、9原発16基の原子炉の、新基準への適合審査(再稼働)申請が受理され、うちプルサーマル運転3基を含む9基の原子炉の審査が山場を越えたとされる。昨年12月25日には自民党の原子力規制に関する党内チームの座長を務める塩崎恭久衆院議員が田中俊一原子力規制委員会委員長に国会議員や立地自治体の首長、電力会社らの意見を聴くように談判し、露骨な圧力をかけた。事務局である原子力規制庁のスタッフが政府各部門の官僚の寄せ集めということで、ただでさえ独立性に懸念の強い原子力委員会は、これで一層、政権党、政府・経産省、電力会社の方に顔を向けることになるだろう。

原発再稼働の荒波とともに核燃料サイクルも走り続けようとしている。「朝日」社説は、巨額のコストがかかり、資源の有効活用という意義がなくなった核燃料サイクル事業は撤退が世界の流れだと指摘し、これを続けようとしている安倍政権を無責任と断じている。そのとおりだ。

だから都知事選、脱原発の道筋を明確に示し、この道に都民・国民を統合して戦うことを模索してほしいのである。

そろそろ核燃料サイクルの話、終わりに近づいた。今日は、プルサーマルの話をまとめ、明日、全体のまとめをしてみようと思う。

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プルサーマルの危険性
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核分裂性のプルトニウムは、ウラン235と比べると、より不安定で、中性子を吸収しやすく、核分裂を起こしやすい。

確かにウラン燃料でも、原子炉内で燃えている間に、ウラン238がプルトニウムに転換し、その半分程度(燃料全量の1%程度)が燃えている。しかし、プルサーマルで用いられるMOX燃料のプルトニウム濃度は5~10%であるから、ウラン燃料を燃やす場合に比べて、プルトニウムの量は、著しく多い。

そのために出力の急な上昇、核分裂暴走及び暴走した場合の制御棒の性能低下などが危惧されている。また燃焼中のfpガスの放出量が非常に多いことやプルトニウムの濃度が稠密になると融点が下がることなどが原因で、燃料ペレットの破損及び燃料棒の破損を起こし、メルトダウンを起こすおそれがあることが指摘されている。更には、ウラン燃料を燃やす場合と比べて、MOX燃料を燃やす場合には、アルファ線を放出し、長い崩壊系列を持ち、また半減期が長いプルトニウム240、242,ネプツニウム、アメリシウム、キュリウムなどの核種がより多く蓄積し、崩壊熱が格段に高く、放射能も著しく強くなるので、万一事故が発生して放出されると被害は著しく大きくなるなどの危険性が指摘されている。

なおプルサーマルで燃やしたMOX使用済燃料の再処理が困難であるのは、この最後に述べたことによる。

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プルサーマルはプルトニウムのごみ焼却
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以上見たように欺瞞的理由を述べたて、指摘した危険性も顧みず、しかも経済的合理性を無視してまで、政府・経産省及び電力会社が、プルサーマルを強行しようとしているのは何故であろうか。それは、結局、高速増殖炉開発・実用化が幻となった今、それでも使用済燃料再処理路線を走ることにより必然的に備蓄されていくプルトニウムを、実際に使用して減らす努力をしているということを世界に示すためのもの、即ち、アリバイづくりに過ぎないということである。備蓄したプルトニウムのごみ焼却のための苦肉の策なのである。

高速増殖炉開発・実用化構想には、誤りとはいえ、限りあるウラン資源を100%使い切り、有効利用をしたいというギラギラとした「野望」が認められた。プルサーマルには、何もない。独自の意義や価値を見いだすことはできないのである。
(続く)

核燃料サイクルからの撤退を! (12)

名護市長選の結果に快哉を叫んでいる人は多いだろう。この勢いで都知事選も脱原発派の統一で勝利したいものだ。

宇都宮氏は、「都知事選は脱原発の最後のチャンスだと言って一本化を求めている人たちいるが、その最後のチャンスがつぶれたらあきらめるのですか」と語気を強める。確かにそうだ。しかし、それでも敢えて問いたい。歴史には転換点というものがある。その転換点を的確にとらえ、歴史を前進させる方向に向けて舵を切るということが必要だ。過去の言動や実績に目を奪われ、現在どうなのかを確かめずに、細川氏を頭からダメだとはねつけ、協議しようとすらせず、今まさに原発再稼働と完全復活に向けて怒涛のごとく押し寄せる荒波に、脱原発の声を結集して立ち向かう努力をしないのは間違いではないかと。

昔、こんなことがあった。1936年12月召集の第70帝国議会・衆議院本会議において、政友会・浜田国松議員は2.26事件で皇道派が解体したあと、統制派が陸軍を掌握し、高まる軍部ファッショに抗して、軍部を激しく攻撃した。浜田議員は、寺内寿一陸軍大臣の恫喝に一歩も引かず、かの有名な「割腹問答」の応酬をした。浜田議員は、軍部の言いなりになる広田弘毅内閣を退陣させるために挑発したのであった。怒りの持って行き場のなくなった寺内陸相は、広田首相に衆議院解散を迫ったが、広田首相は内閣総辞職を選んだ。

そこで軍部ファッショと戦争路線に反対する政友会・民政党は、稀代の風見鶏と言われた宇垣一成元陸軍大臣・前朝鮮総督の担ぎ出しに乗り出し、宇垣も反軍部ファッショの覚悟を固めて、出馬の意思を固めた。そして天皇から宇垣に組閣命令を出され、反軍部ファッショ・平和の人民戦線「的」内閣の成立が現実のものとなろうとした。しかし、実にこのとき社会大衆党は、陸軍の進める広義国防路線は、勤労大衆の生活向上を目標としているとして陸軍と結び、宇垣内閣の成立に反対した。結局、陸軍の宇垣内閣には陸軍大臣を出さない強硬策を打ち破るだけの情勢熟さずで、宇垣内閣は幻と消えた。かわって陸軍の支持を得た林銑十郎元陸軍大臣(満州事変の朝鮮軍司令官。朝鮮軍を独断動員した越境将軍の異名をもつ。)が組閣、文字通り軍部独裁政権となった。これが軍部を勢いづけ、1937年7月7日の盧溝橋事件、そして日中全面戦争に突入する転換点となった。

だからとどうだというわけではないが、きれいごとを言って大局を見誤ってはならないことを示す歴史の一例として頭の片隅に置いては欲しいものである。

さてプルサーマル。どうしてこれを導入しようと言うのであろうか。

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プルサーマル導入の論拠は?
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ところでプルサーマルを実施する論拠として、政府(経産省・資源エネルギー庁)、原子力委員会及び電力会社は、①ウラン資源の有効利用、②余剰プルトニウムを持たないという国際公約の実行、③高レベル放射性廃棄物(本節では使用済燃料そのものも「高レベル放射性物質」という。)の発生量を少なくすることができる、の3点をあげていた。しかし、これらは、以下に述べるとおり成り立たない。

順不動になるが、まず②の論拠について。これは要するに使用済燃料再処理によって、自ら意欲してプルトニウムを抽出、備蓄をしておきながら、余剰プルトニウムを持たないとの国際公約を口実にして、備蓄したプルトニウムを減らすためにプルサーマルを実施するのだという奇妙な理屈であり、反論にも値しない。まじめに議論をするなら再処理路線そのものを再検討するべきであろう。

次に③の論拠について。ワンススルーする場合には使用済燃料全量が高レベル放射性廃棄物となってしまうのに比べて、再処理によって高レベル放射性廃棄物の発生量は減ることになることは、理屈の上ではそのとおりであろう。しかし、それはプルサーマルの燃料としたMOXの使用済燃料を繰り返し再処理する場合にはじめて言えることである。現実にはプルサーマル運転後に発生するMOX使用済燃料(ウラン燃料の使用済燃料よりも放射能が強く、崩壊熱も高い。)を再処理する技術は確立されておらず、そのための再処理施設建設は計画されていないのでMOX使用済燃料はワンススルーで処分されることになる。そうすると計算上は当初の使用済燃料から分離抽出されたわずか1%相当分のプルトニウムがプルサーマルで消えるのみであとはそのまま残り、高レベル放射性廃棄物の発生量は殆ど減らないのである。のみならず既に述べた再処理をしたことによりガラス固化体という始末に負えない危険な物質を残すことになる。
なお付言するに、③の議論は、使用済燃料の取扱いについて、再処理路線をとるかワンススルー路線をとるのかという問題であって、プルサーマル導入の論拠として無理にこじつけようとしているに過ぎないように思われる。

①の論拠についてはどうか。経産省・資源エネルギー庁の2001年11月作成の「核燃料サイクルのエネルギー政策上の必要性について」と題する説明資料において、濃縮度4.1%のウラン燃料1000㎏を燃やす→それにより生じる使用済燃料1000㎏を再処理し、プルトニウム約10㎏、濃縮度0.9%のウラン約940㎏を回収する→それを加工、濃縮してMOX燃料約130㎏、濃縮度4.1%のウラン燃料約130㎏が作られる→これによりもとの1000㎏のウラン燃料に対して260㎏、約25%の新たな燃料を生み出すことができるというモデルをあげて、資源の有効利用が出来ると説明されている。

しかし、これは著しい誇大宣伝である。

使用済燃料再処理により生み出されるプルトニウム10㎏のうち核分裂性のプルトニウム(Pu239、Pu241)はおよそ70%であり、しかも再処理工程でのロスが発生するのでそれを10%と想定すると、結局、実際には、核分裂性のプルトニウムは、6.3㎏でしかなく、MOX燃料となって実際に炉内で燃えるのはそのうちの5分の4の約5㎏である。これはもとの1000kgのウラン燃料の僅か0.5%である。

また回収済みの濃縮度0.9%の汚れたウラン約940㎏を濃縮して4.1%の濃縮ウランを製造することは実際には実施される計画はない。のみならず、そもそもこれは、ウラン燃料の使用済燃料に残留するウラン235の再利用ということであって、新たな燃料を生み出すわけではなく、プルサーマルとも関係がないことである。従って、プルサーマルで新たな燃料創出に寄与するのは、結局、核分裂性のプルトニウム約5㎏に過ぎない。使用済燃料再処理、MOX燃料製造のために投入される膨大な資源とコストを考えると何ら得るものはないどころか大きな浪費である。

大綱では、プルサーマルにより、「1~2割のウラン資源節約効果が得られる」と、ややあいまいな評価に落としているが、それさえも著しい誇張である。
(続く)
   注:当初アップロードした原文では、有効活用率5%としたが、0.5%と訂正する。

核燃料サイクルからの撤退を! (11)

2013年12月5日付「朝日」に、米国原子力規制委員会(NRC)委員長アリソン・マクファーレン氏のインタビュー記事が載っている。NRCは、核利用推進の立場から「安全性」を確保するための機関であるから脱原発の立場からの批判は当然あるだろう。
しかし、たとえば電源喪失時の対策としてすべての原発に時間無制限の安定的バックアップ電源を設けることを事業者に命令する(わが国ではバックアップ用電池は1系統あたり24時間作動、ディーゼル発電は1週間分の燃料を備え付けることを義務付け)、放射能漏れなどの緊急時の対応について運転開始前に実効性を演習で確かめないと稼働できない(わが国では緊急時対策の実効性を演習で確かめることを要しない)、できるだけ物事を透明な状態で行い、一般の人が読めるように書かれた文書のほとんどは公開し、公聴会も数多く開くなど情報公開に努力している(わが国では情報公開が著しく遅れており、特定秘密保護法によりそれが一層甚だしくなる懸念がある)、質量優れた事務局スタッフを擁し、原子力業界からの独立性を確保が図られている(わが国の事務局である原子力規制庁は、政府各部局からの寄せ集めで、かつ人員面でも弱体である。)など、わが国の原子力規制委員会と比べて、より信頼性が高いと言えそうだ。

さてプルサーマルの話、なかなかまとまらない。もう少し続けることにする。

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プルサーマル導入の経緯(3)
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チェルノブイリ事故後、1990年代後半には、こうした脱原子力発電依存の世論を背景に、1980年代末ころから続発する事故(1989年1月の福島第2原発3号炉再循環ポンプ破断事故、1991年2月の美浜原発2号炉蒸気細管ギロチン破断事故、1994年6月の福島第1原発シュラウドひび割れ事故及び既に述べた1995年12月の「もんじゅ」のナトリウム漏出事故)が、地方自治体を後押しし、地方自治体による政府の原子力政策への異議申立へとつながるのである。

まず、福井県と敦賀市は、「もんじゅ」事故発生直後の1995年12月11日、事故現場に立ち入り調査をした。これは動燃との安全協定にもとづく権限の行使で、当然と言えば当然のことであるが、それまでにこうした立ち入り調査さえも実施されたことはなかった(なお、その立ち入り調査によって、動燃が、事故状況を撮影したビデオテープのうち一部のみを公表し、肝心な部分を秘匿していたことが突き止められ、その後の動燃批判、解体のきっかけとなったのであった。)。

次いで、1996年1月、福島、新潟、福井3県知事連名の「今後の原子力政策の進め方についての提言」と題する政府への申し入れがなされた。その中で、3県知事は、①核燃料サイクルのあり方などについて国民各界各層と対話をし、合意形成をはかるべく、原子力委員会の体制整備を図ること、②検討段階から各種シンポジウム、フォーラム、公聴会を積極的に企画・開催すること、③以上の手続を踏まえて、改訂時期にこだわらず、原子力開発利用長期計画を見直すことなどを訴えた。

さらに、新潟県巻町では、東北電力巻原子力発電所建設の可否を巡って町政が紛糾した。1994年、原発賛成に転じた町長の当選、建設反対派の住民による自主管理住民投票の実施、住民投票条例制定、町長リコール、建設反対派町長の当選、そして1996年8月には、建設賛否を問う住民投票が行われ、有効投票総数の過半数が建設反対を占め、上記原子力発電所の建設計画は中止のやむなきに至った。

こうした情勢に促されて、わが国政府も、原子力行政の改革の検討に着手することを余儀なくされ、1996年4月には、通産省、科学技術庁両省庁の提唱のもとに、「原子力政策に関する国民的合意の形成に資するための場」として、「各界各層から幅広い参加者を招聘、原子力委員は常時出席、出席者の対話方式を採用、地域における開催も検討、全面的に公開」の原則のもとに、「原子力政策円卓会議」がスタートした。

ところが、通産省・総合エネルギー調査会原子力部会は、上記の「原子力政策円卓会議」がいまだ継続中であるにもかかわらず、そこでの議論とは無関係にそそくさと会合を行い、突如として、1997年1月20日、今後数十年間の核燃料サイクルの柱としてプルサーマルを積極的に進めるとの中間報告をまとめてしまった。

これを受けて、原子力委員会は、同月31日、「当面の核燃料サイクルの具体的な施策について」と題する文書をまとめた。それによると、①プルサーマルは現時点で最も確実なプルトニウムの利用方法であり、原子力発電所を有する全ての電気事業者が共通の課題として取り組む必要がある、②2010年頃までには全ての電気事業者が実施する必要がある、③具体的には海外再処理で回収されたプルトニウムを用いて2000年までには3~4基程度で開始し、その後、国内外でのプルトニウムの回収状況や個々の電気事業者の準備状況等に応じて2010年頃までに十数基程度にまで拡大することが適当である、とプルサーマル実施の方針が示されていた。

同年2月4日、政府は、閣議了解によりこれを確認し、直ちに動き出した。通産省、科学技術庁が、福井、福島、新潟3県への協力申し入れ、東電及び関電がそれぞれの原子力発電所立地県と市町村への協力申し入れ、当時の橋本首相自らが上記3県知事と会談をするなどプルサーマル導入へ目まぐるしく動く。

政府は、一方でプルサーマルを含む核燃料サイクルの問題などについて、広く各界各層の国民と対話して、合意形成を図るとして、「原子力政策円卓会議」を提唱し、開催しているのに、他方で、それを無視して一方的に、プルサーマル実施する方向に走り出してしまったのである。
これは二枚舌、背信行為であり、厳しく批判されなければならない。

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プルサーマル導入状況
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政府、電力会社一体となったプルサーマル導入の動きに対し、導入対象とされた原子力発電所の地元では、さまざまな反対運動が展開され、またイギリス燃料公社(BNFL。当時)によるMOX燃料のデータ改ざんの発覚などもあり、プルサーマル導入は、政府、電力会社の思い通りには進まなかった。

2011年3月11日時点の状況は以下のとおりであった。
① 既に導入がなされたところ
・ 九州電力玄海原子力発電所3号機 2009年11月5日より試運転開始、同年12月2日より営業運転開始
・ 四国電力伊方原子力発電所3号機 2010年3月2日より試運転開始、同年3月30日より営業運転開始
・ 関西電力高浜原子力発電所3号機 2010年12月25日より試運転開始、2011年12月25日より営業運転開始
・ 東京電力福島第一原子力発電所3号機 2010年9月18日より試運転、同年10月26日より営業運転開始
② 事前合意が成立しているところ)
・ 中部電力浜岡原子力発電所4号機 2012年3月以降に導入予定
・ 関西電力高浜原子力発電所4号機 2011年夏から導入予定
・ 中国電力島根原子力発電所2号機
・ 北海道電力泊原子力発電所3号機
・ 東北電力女川原子力発電所3号機 2015年度までに導入予定

本日(2014年1月19日)現在、新基準への適合審査(再稼働)申請をしているのは、9原発16基。以下のとおりである。

四国電力・伊方3号機(プルサーマル)、九州電力・玄海3号機(プルサーマル)、4号機、川内1号機、川内2号機、北海道電力・泊1号機、2号機、3号機、関西電力・大飯3号機、4号機、高浜3号機(プルサーマル)、4号機、東京電力・柏崎刈羽6号機、7号機、中国電力・島根2号機、東北電力・女川2号機

本日の「朝日」紙が報じた原子力規制委員会田中俊一委員長の談によると、このうち四国電力・伊方3号機(プルサーマル)、九州電力・玄海3号機(プルサーマル)、4号機、川内1号機、川内2号機、関西電力・大飯3号機、4号機、高浜3号機(プルサーマル)、4号機、計9基の審査の「山を越えた」とのことであり、いよいよプルサーマル再稼働も正念場を迎えている。
(続く)
プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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